← ホームに戻る

芸名・グループ名は商標登録すべき?
スマイレージの事例と「著名な略称」の考え方

芸能人、アイドル、YouTuber、VTuber、配信者にとって、芸名・グループ名・チャンネル名は、単なる「名前」ではありません。ファンはその名前を見て動画を再生し、ライブに行き、グッズを購入します。つまり、活動名そのものが、価値を生み出す「ブランド」として機能します。

そのため、活動名を商標登録していない場合、第三者又は活動主体以外の名義で同一・類似の商標が登録され、後から活動やビジネス展開に支障が生じる可能性があります。

※本記事は、公開情報に基づき、芸能活動名・配信活動名に関する商標管理上の注意点を解説するものです。特定の関係者の行為や改名理由を断定する趣旨ではありません。

1. 結論:有名になる前こそ商標登録を検討すべき

芸名・グループ名・チャンネル名は、活動の中心にあるブランドです。全国的に知られる段階になれば、商標法4条1項8号によって保護される可能性は高まります。しかし、有名になる前は、その保護が十分とは限りません。

2. 本名と芸名では、法律上の守られ方が違う

本名や著名な芸名等については、一定の場合、商標法26条により、他人の商標権の効力が及ばないと主張できる場面があります。ただし、これは常に自由に使えるという意味ではありません。特に、商品名・サービス名・グッズ名・ロゴとして使用する場合には、商標権侵害の問題が生じ得ます。

また、商標法4条1項8号は、他人の氏名・名称・著名な芸名・著名な略称等を含む商標について、本人の承諾がない限り登録できないと定めています。すでに広く知られた芸名やグループ名であれば、第三者による無断出願・登録を拒絶又は無効にできる可能性があります。

しかし、問題は「有名になる前」です。デビュー直後のアイドル、活動開始直後のYouTuber・VTuber、まだ知名度が十分でない配信者などの場合、「著名な芸名」「著名な略称」とまではいえない可能性があります。この段階で第三者に先に出願されると、商標法4条1項8号だけで確実に防げるとは限りません。

3. 「著名な略称」はどう判断されるのか

商標法4条1項8号の「著名な略称」について、重要な判例として国際自由学園事件があります。この事件では、「自由学園」という略称が、学校法人自由学園を指すものとして著名かどうかが問題になりました。

最高裁は、著名性の判断について、単に指定商品・役務の需要者だけを基準にするのではなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているかどうかを基準に判断すべきであると示しました。

これは芸能活動にも重要です。芸名やグループ名が、本人やグループを指すものとして社会的に受け入れられている段階であれば、商標法4条1項8号によって保護される可能性があります。一方で、活動初期の段階では、その保護が不安定になり得ます。

4. スマイレージの事例

アイドル名の商標管理を考えるうえで、しばしば話題にされるのが「スマイレージ」の事例です。スマイレージは、2009年4月に結成され、2010年5月にメジャーデビューし、その後、2014年12月に「アンジュルム」へ改名したアイドルグループです。

改名理由が商標問題であったと公式に確認されたわけではありません。本稿では、活動名と同一又は近い商標が、活動主体以外の名義で登録されていた事例として、商標管理上の示唆を整理します。

項目内容
登録番号商標登録第5408569号
商標SMILEAGE/スマイレージ
権利者株式会社ホワイトベース
出願日2010年10月26日
登録日2011年4月22日
指定区分第3類、第9類
存続期間満了日2031年4月22日

ここで特に注目すべきなのは、第9類です。第9類には、レコード、音楽ファイル、画像ファイル、録画済みDVD、電子出版物など、音楽・映像・デジタルコンテンツに関係する商品が含まれていました。

第9類の商品例芸能活動との関係
レコード音楽商品の販売
音楽ファイル音源配信
画像ファイルデジタル写真・画像コンテンツ
録画済みDVD・ビデオライブ映像・映像作品
電子出版物デジタル写真集・電子書籍

現代の芸能活動は、音源、MV、ライブ映像、配信コンテンツ、デジタル写真集などと強く結びついています。そのため、ライブやイベントをカバーする第41類だけを考えれば十分というわけではありません。音楽・映像・デジタルコンテンツに関係する第9類を活動主体以外に押さえられると、後から活動やビジネス展開に支障が出る可能性があります。

5. 芸能人・配信者が検討すべき主な区分

芸名・グループ名・チャンネル名を守る場合、活動内容に応じて、次の区分を検討する必要があります。

区分主な対象重要な場面
第9類音楽・動画データ、アプリ、電子出版物音源配信、MV、ライブ映像、デジタル写真集
第16類写真集、ポスター、ステッカー紙の公式グッズ、書籍、印刷物
第25類Tシャツ、パーカー、帽子ライブグッズ、アパレル展開
第35類小売・卸売、オンラインストア運営、広告公式EC、グッズ販売サービス、企業案件
第41類ライブ、イベント、動画配信芸能活動・配信活動そのもの

特に、第35類は「商品そのもの」ではなく、小売・オンラインストア・販売サービス側を保護する区分です。Tシャツは第25類、写真集は第16類、音源や映像コンテンツは第9類、ライブや配信活動そのものは第41類というように、商品・サービスごとに区分を整理する必要があります。

6. 活動開始時に確認したいチェックリスト

7. まとめ

芸名、グループ名、チャンネル名は、活動の中心にあるブランドです。名前の価値が高まってから守るのではなく、価値が高まる前に守ることが重要です。

芸能人、アイドル、YouTuber、VTuber、配信者が本格的に活動を始める場合、またはグッズ販売・動画配信・企業案件を予定している場合は、早い段階で商標調査と商標出願を検討することをおすすめします。

MEVRO国際特許事務所のサポート

MEVRO国際特許事務所では、芸名・グループ名・チャンネル名・ブランド名について、商標調査、指定商品・役務の検討、日本商標出願、拒絶理由通知への対応、海外展開を見据えた出願方針の整理をサポートしています。

初回のお問い合わせ・概要確認は原則無料です。活動名やブランド名の保護をご検討中の場合は、お気軽にご相談ください。

Email: mevro.ip@gmail.com
LINE: @475wfhaa

参考資料

※本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に対する法律意見ではありません。公開情報に基づき、商標管理上の注意点を整理しています。

← 知財コラム一覧